シリーズAを目指す起業家がやるべきこととは。採択企業が学びを語る

グローバル・ブレインのアクセラレーター「XLIMIT」を経て起きた自社の変化、印象的だった学びなどを採択企業5社の代表が語っています。

Flamers

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grow&partners

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LX DESIGN

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クレイ・テクノロジーズ

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ビットクォーク

XLIMIT 2nd Batchに採択されたFlamers 代表取締役 佐藤 航智氏、grow&partners 代表取締役 幸脇 啓子氏、LX DESIGN 代表取締役社長 金谷 智氏、クレイ・テクノロジーズ 代表取締役 CEO 中田 智文氏、ビットクォーク 代表取締役CEO 小森 雄斗氏。

独立系VCのグローバル・ブレイン(GB)が主催する、シリーズA未満のスタートアップ支援を目的としたアクセラレータープログラム「XLIMIT(クロスリミット)」。

2023年に実施した2nd Batchの採択企業5社に、XLIMITでのご経験を振り返ってお話しいただきました。

プロのバックアップのもと、挑戦したかった

──XLIMITに応募した理由を教えてください。

LX DESIGN金谷 :先輩起業家から学びながら、日本を代表するVCの皆さんと一緒に市場にチャレンジしていきたいと考え、応募しました。

grow&partners幸脇:私も同じく、プロのバックアップを受けてシリーズAに挑戦していきたいと思ったからです。XLIMITの内容が自分の課題感と一致していましたね。

Flamers佐藤:GBの方だけでなく、いろいろな方の観点でメンタリングやフィードバックを受けられるのが魅力でした。もちろんアクセラだけに留まらず、GBさんからの出資の機会にもつながればという気持ちもありました。

ビットクォーク小森:弊社は関係性のあったGBの瓜本さんのご紹介がきっかけです。国内有数のVCであるGBさんのネットワークやノウハウが得られることに惹かれましたね。

クレイ・テクノロジーズ中田:私もGBだからという理由が大きいです。シードアクセラレーターはたくさんありますが、シードだけに最適化したメンタリングを受けるだけでは、シード目線でしか物事を見れなくなってしまう懸念があって。GBのようにレイター投資にも知見があるVCが行うシードアクセラだからこそ、長期目線に基づいたメンタリングを受けられるかなと感じました。

──お話に挙がったメンタリングについても聞かせてください。各メンターとの関わりを通じてどのような学びがありましたか?

クレイ・テクノロジーズ中田:Salesforce Venturesの細村さんにメンタリングいただいたんですが、「シリーズBのスタートアップでも顧客のペインの定義の話はする」と仰っていたことが記憶に残っています。ペインの定義はシード段階でクリアにするというより、常に意識すべき論点なんだと理解できました

Flamers佐藤:メンターのGB立岡さんから「常にどこまで検証が進んでいるかが重要」と言っていただけたことは事業運営上の指標になっています。資金調達に向けて売上やユニットエコノミクスに集中して取り組むのは大前提として、さらに「何の検証ができているのか」を意識するようになりました。

LX DESIGN金谷:営業における示唆をいただけたのが大きいですね。営業課題を「〇〇の壁」として可視化したことで、弊社が挑む学校教育業界ならではの営業ストーリーや難しさの解像度が上がり、顧客の行動やインサイト研究も進められました

──事業面以外で印象に残っているアドバイスがあれば教えてください。

ビットクォーク小森:ピッチに関するアドバイスです。特に「前提知識がない方からはこう見える」「初見の方にはここがわかりづらい」など、相手の立場に立ったゼロベースでのアドバイスは、毎日プロダクトに向き合い過ぎて視点が固まっていた私たちにとってありがたかったなと。事業紹介の資料も大幅に改善でき、プレゼンもわかりやすくなりました。

LX DESIGN金谷 :メンタリングとは少しずれますが、GB代表の百合本さんから背中を押す言葉をいただけたのは心に残っています。「すでに学校教育改革のど真ん中に取り組む国内オンリーワンの存在になっている。ビジョンを信じて骨太に突き進めばいい」などとチアアップいただけました。

事業ノウハウを得て起こった「変化」

──XLIMITの特徴の1つに、営業・マーケ・知財・PRなど各領域のスペシャリストに相談ができるオフィスアワーがあります。この機会を経てどのような変化がありましたか?

Flamers佐藤:カスタマーサポート(CS)の重要性を学べたのは大きかったです。弊社ではロイヤル顧客へのヒアリングは行っていたんですが、「CSチーム」としては組織化できていなくて。オフィスアワーを経てからは、プロダクトチームの直下にCSチームを置く形に組織がアップデートされ、会社全体でCSに取り組む文化も生まれました。

grow&partners幸脇:営業面では異業種のメガべンチャーがどんなプラットフォーム施策をとっていたのか、弊社で応用できそうなことは何かを議論させてもらいました。また知財支援では「ビジネスモデル特許」の話を聞かせていただいたのが興味深かったです。

LX DESIGN金谷:知財支援は弊社も印象に残っています。海外の競合企業がどのような知財戦略を取っているか、フェーズごとの観点が得られました。サービスそのものに対してだけでなく、治験などの前段階でも特許は取れるなど新たな視点を知れたのも良かったです。

grow&partners幸脇:私も知財などの観点から見た参入障壁の築き方は重要だと感じました。つい後回しになってしまいがちですが、意識していきたいですね。

クレイ・テクノロジーズ中田:弊社が参考になったのはPR支援です。以前までは良いものを作れば、あとは人の繋がりでサービスは広まると甘い考えを持っていたんですが、似ているサービスが多い中ではPR・マーケティングがいかに重要か知りました。

grow&partners幸脇:PRに関しては、プレスリリースの書き方などだけでなく「この場合は顧客獲得のためにあえてプレスリリースを出すべき」「今回はリリースする必要がない」などのように、戦略から一緒に考えてくださいました。常に「事業を成長させる」視点で議論させていただけたのが良かったです。

オフィスアワーの様子

先輩起業家、VC、大企業との出会いがもたらしたもの

──BASE株式会社の鶴岡さんやベースフード株式会社の橋本さん、株式会社カウシェの門奈さんなど、先輩起業家を招いた勉強会も行われました。どのようなことが語られたのでしょうか。

LX DESIGN金谷:先輩起業家の皆さんからは一様に「プロダクトを磨くことに注力すべし」というメッセージをいただいたように思います。特にベースフード橋本さんが仰っていた「創業4~5年目くらいまでは大きなインパクトを出したい思いが強過ぎて、シリーズAっぽく“お化粧”しようとしていた」という話は印象に残っていて。PMFっぽく見せるのでなく、作ったプロダクトを常にいいものにし続け、どうあるべきかを追求していく重要性を改めて感じました。

クレイ・テクノロジーズ中田:橋本さんの会でいうと、海外進出のお話が参考になりました。日米では消費者セグメントの多さが違うため売れる商品のバリエーションが異なるという情報は、海外展開も意識している弊社としては興味深かったです。

──資金調達に関するアドバイスなどもありましたか?

Flamers佐藤:はい。シリーズAの資金調達で使われたピッチ資料を拝見させてもらいながらお話しを伺いました。「今回の資金調達では何の仮説を検証するのか」「どんな目的で資金を集めるのか」など、実際にピッチで皆さんが話した内容も伺えてありがたかったですね。

grow&partners幸脇:資料を見せていただいたのは大変参考になりました。また、先輩起業家からのシェアを受けて「起業家としてどうあるべきか」に向き合うことは改めて大切にしたいと感じた部分です。

──採択企業はGBの年次カンファレンス「GBAF」(※ハイライトムービーはこちら)での登壇や有力VCにピッチを行える「Demo Day」など、投資家や大企業とのリレーションを広げられる場に参加できます。これらは事業にどのように影響しましたか?

Flamers佐藤:シリーズAの資金調達につながる、VCの方々とのリレーションを作ることができました。GBさんのご紹介ということもあり、信頼できる方々と出会えて大変感謝しています。

ビットクォーク小森:GBさんに選定いただいたスタートアップとして注目いただけるのは大きいですよね。私たちもプレシリーズAでの資金調達をスムーズに進められました。

Flamers佐藤:正直、私たちだけでVCの方と会っていた際には明らかに弊社の事業に興味がない方も多かったんです。ですが、Demo Dayで出会えた方は私たちの事業を知った上でお声がけしてくださっているので、その点でも安心感がありました

LX DESIGN金谷:私もDemo DayやGBAFは、事業自体に共感いただく機会になったと感じます。弊社サービスの「複業先生®︎」へ登録してくださった方もいらっしゃいました

Demo Dayの様子

「シリーズA、どうしよう」という起業家へ

──ありがとうございます。最後に、XLIMTはどのような起業家におすすめしたいか教えてください。

Flamers佐藤シリーズAを突破するための伴走者が欲しい方です。弊社もそうだったんですが、シードラウンドの感覚で日々仕事をしてしまうとどうしてもシリーズAのイメージが掴めず、やるべきことがぼんやりしてしまいます。「もっと実感を持ってシリーズAに向かいたい、そのために自分たちがすべきことを具体化したい」方におすすめですね。

grow&partners幸脇:私も佐藤さんに近いです。シリーズAに向けてまっすぐにはいかなさそうだと感じている起業家や、つい自分ひとりでなんとかしようとしてしまう方の支えとなるプログラムが揃っています。

ビットクォーク小森:プロダクトややりたいことは固まっていても、戦略性や打ち手、ネットワーキングといったリソースやノウハウが不足している企業ですね。それほど、これまで蓄えられたGBさんのリソースや知見には信頼・安心感があります。

クレイ・テクノロジーズ中田:共感します。私も、スタートアップとしてどのような成功をゴールとしているのかは明確であるものの、潰すべき論点が多すぎて慌てている起業家には適しているかなと。

LX DESIGN金谷:論点や課題を整理できるのはXLIMITの特徴ですね。私たちもメルカリ、ラクスル、BASEなどを支援したGBの皆さんや、先輩起業家の方々と歴史や学びを分かち合えたことで立ち位置や課題を理解できました。

私たちが挑む学校業界は、株式市場のような評価制度に組み込まれていないのでなかなか変革が進みません。そうした業界でのビジネスは短期的にはマネタイズがしづらく、資金調達も極めて難しい。弊社としても常に課題に直面し続けてきました。

そんな中でも、グローバル数兆円企業となって市場をまるごとアップデートするというビジョンを信じてくれたのがGBの皆さんです。なので、XLIMITは産業ごと背負う気概のある起業家や、まだサービスのモデルが確立されていない領域で数兆円規模の事業を描く方にすすめたいなと思います。